豊田中央研究所が世界最高の太陽光変換効率7.2%を実現しました!
この人工光合成についてわかりやすく解説します!
太陽光でCO2を資源に! 人工光合成の飛躍的進展 | お知らせ | 株式会社 豊田中央研究所 (tytlabs.co.jp)
Redirecting (elsevier.com)
人工光合成ってなんだ?
植物が行っている光合成は下記です。
二酸化炭素(CO2)+水(H2O)+光エネルギー → 酸素(O2)+有機物(糖など)
これを人工的にやることです!
え、わからんしもっと簡単にですって?
二酸化炭素を光の力でそれ以外の物質に変換することです!
植物は葉の中にある葉緑体を使って生物的に二酸化炭素の還元を行っていますが、人工的にこれに近い反応を活性化させる触媒の研究が盛んに行われております。
人工光合成のメリット・デメリット
人工光合成のメリットとしては、
1.(多くが)常温・常圧で駆動できる。
2. CO2の還元によって環境からの除去ができる。(温暖化対策に貢献する)
3. 副産物で太陽光エネルギーの蓄積ができる。(エネルギー源となる)
人工光合成のデメリットとしては、
1.ユニットの耐久性(電気分解による電極等の劣化)
2.効率とコストの問題(これは将来的には解決する可能性がある)
が考えられます。効率については植物がやっているように、人工光合成は大気中からの濃度の薄いCO2を直接変換するものではなく、CO2が溶け込んだ水溶液を還元するものです。
よって、一度CO2を回収(※)して水溶液を作る必要がまだあります。ここを含めると総合的な効率やコスト面では低下することになります。
※CO2回収技術についてはまた今度記事にしたいと思います!
豊田中央研究所の成果について
豊田中央研究所の成果では、太陽光発電パネルからの電力を利用して、CO2が溶け込んだ水溶液を電気分解(CO2を還元)してギ酸(HCOOH)と酸素を生成する。その効率が7.2%と、従来(2015年)の4.6%(当時の世界最高)から飛躍的に向上しました。また、セル構造を工夫し、36cm角の実用サイズになりました。下記がそのセル画像となります。

CO2が姿を変えた副産物としてギ酸が生成しますが、このギ酸は何に利用できるのでしょうか?
ギ酸の利用法について
ギ酸(HCOOH)については、元々化学的性質を利用した用途(防腐剤・漂白・皮革なめし・エステル製造、各化学系原料)で幅広く利用されておりました。
それに加えて、水素キャリア(水素の運び屋用途)があります。
水素キャリア→アンモニア、ギ酸
水素は燃焼したときに水が発生するだけで二酸化炭素が出ないのでクリーンエネルギーの筆頭として扱われておりますが、最も軽い元素であるため、貯蔵、輸送が困難です。
水素の沸点は-252.9℃
一般的な水素ボンベ(シリンダ)の圧力は14.7MPaです。
いずれもシビアな条件で、その状態にする。そして維持するのに大きなエネルギーを要します。(つまり効率が悪い)
そこで、アンモニア(NH3)が期待されています。
これは沸点が-33℃、20℃での液化圧力が0.86MPaと条件が水素に比べて緩いからです。
ギ酸については沸点が101℃で常温常圧では液体であるため、もっと条件が緩いです。
ただし、ギ酸は水素を取り出した際にCO2が発生してしまいます。
結論:まだ地球は救えないが、将来的には救えるかも
地球温暖化を防ぐためには、大気からCO2を永続的に除去しないといけません。
ギ酸を生成することでCO2の固定となりますが、ギ酸を利用する際にCO2に戻ってしまうため、永続的な除去とならない点がネックです。
微生物でギ酸からメタンに転換する技術も研究されていますが、後段技術の進展が望まれるところです。
※他の技術について、CO2からメタノールを合成できる技術(下記リンク)については、有価物への転換が容易であるため、こちらの方がより有望かと思いますが、効率アップと触媒コストがネックです。
産総研:低温で二酸化炭素からメタノールを合成できる触媒を開発 (aist.go.jp)

今回はちょっと難しい内容でしたが、いかがでしょうか…?
人工光合成はロマンあふれる技術ですし、将来のカーボンリサイクル(CO2を有価物に転換して資源化すること)には欠かせないものです。今後の発展に期待しましょうね!
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